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May 08, 2005

『幻の水素社会』

幻の水素社会 「環境問題」に踊らされるピエロたち』
藤井 耕一郎 著

今の燃料電池ブームはすごい。燃料電池車はあと少しで手が届きそうな超クリーン自動車ということに(世間的には)なっているし、首相公邸にも家庭用燃料電池が入ったくらいだ。産業紙まで含めれば、燃料電池関連の技術開発記事が新聞に載らない日はない。

だが、水素社会や、その中核となる燃料電池については、好意的な意見のほかに、懐疑的意見も聞いていた。だからこの本が「懐疑的」部分を整理し、科学的に説明してくれているのかなと期待して読んでみた。

以下感想。

燃料電池が素晴らしいという社会的風潮に一石を投じようという「気持ち」はわかる。水素信仰に喧嘩を売るという姿勢は面白い。

しかし、一つ一つの章は書き込んであるにもかかわらず、なんだか雑然としていてすっきりしない。
仕方ないので内容をものすごく単純に要約してみると
1.環境問題の奥底には南北問題やイスラム問題がある。京都議定書で日本は負け組となった 
2.水素社会は夢みたいなもの。実際にやろうとするとインフラに莫大なコストがかかる 
3.水素製造から燃料電池までの総合効率もいいとはいえないし、化石燃料代替にならない
ってところか。

本に書かれているとおり、エネルギー問題は国際政治に直結していて、そこにはブラフが多い。イラク戦争をみてもわかる。また石油が本当に枯渇するのかとか、本当に温暖化の原因がCO2なのかとかの議論があることも、京都議定書では日本が一番損をしていることも事実。燃料電池については、実質的な総合エネルギー効率やCO2削減効果、エネルギー安全保障問題に関する効果への疑問があることも本当だ。私自身は知っていることが多かったが、水素社会がすぐ来ると思っていた人には刺激的だろうし、本の表題にあるように「目を覚ます」かもしれない。

しかし結論は「水素社会はホラ」以上はないので、読者は、目を覚ましたけど、じゃあどうしろというのかと疑問を持ってしまう。また、扇情的な書き方は、意図と逆の反応も生み出しかねない。まあ、それがウリなのだろうが。

水素社会にどんな疑念を抱こうと、日本の立場はあまりかわらない。石油枯渇が本当かというより、国力の衰えや世界的なエネルギー不足状態によって、石油や石炭、ガスなどの化石燃料が入手できなくなった時に備え、なんらかの形でエネルギー安全保障を確立する必要があるからだ。その解決策を水素や燃料電池だけに絞ってはいけないが、風力や太陽光、バイオマス、原子力、核融合なども含めて、総合的にエネルギーの確保と高効率利用への努力をしなければならないことに変わりはない。CO2問題だって京都議定書のホスト国でもあったわけで、当面は削減に励まなくてはいけないだろう。

藤井氏は、日本はエネルギー問題でもお人よしだ、ということを言いたいのだろう。しかし強硬論を唱えればうまくいくわけでもない。日本らしく、どちらつかずで、利にさとく立ち回るしかないのかなと思う。その「利にさとく」が難しいのだが。

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Comments

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こんにちわ。この本を読みました、水素エネルギーについて懐疑的視点で読み解くという発想は面白いと思いました。トラバさせていただきました。

Posted by: CAN | June 20, 2005 at 11:24 PM

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