『不都合な真実』がアカデミー賞受賞
グラミー賞で反ブッシュ発言でしばらく総スカンをくらっていたディクシー・チックスがとったと思ったら、アカデミー賞では『不都合な真実』が長編ドキュメンタリー賞を受賞した。
もともとハリウッドは民主党びいきだが、今回は映画賞という形で堂々と共和党政権への批判を明確にしたわけだ。2003年、同じ長編ドキュメンタリー賞を『ボウリング・フォー・コロンバイン』で受賞したマイケル・ムーアがブッシュ批判演説をしたときは、なんとなく会場が困っている感じがしたものだが、今年はもう、ゴア礼賛。アカデミー賞を再放送で見ていたが、ゴアに大統領選の出馬表明をさせようとする演出まであったぞ(もちろんジョークだが)。
ゴルバチョフの主宰する環境保護団体がスターにエコカーを貸し出したなんていうのも、なかなか政治的意図を感じさせるものがある。しかしゴルビーって環境派だったっけ?
そんなこんなでちょっと前に見ていた映画『不都合な真実』について。
基本的にはゴアの講演会を集めた映画だ。じゃあ、退屈かというと、ゴアの語り口がユーモアがあって結構面白い。さすがに途中で眠くなるけど。
キリマンジャロとか北極とか南極とか、さまざまな写真が出てくる。キリマンジャロの雪がなくなったところなどの写真を見せられると「これはやばい」と思う。映像に加えて温暖化の証拠となるデータをおりまぜながら、ゴアがきっちりと地球温暖化問題について説明していくので、とてもわかりやすい。かなり驚いたのは、アメ車が中国車よりも燃費が悪いというデータ。中国車は基本的に欧州や日本の技術を取り入れているからだろうか。
アメリカ人が本当に地球温暖化について知らされていなかったどうかはわからないのだが、ここまできっちり知る機会はなかっただろう。今は京都議定書を脱退したブッシュのアメリカだしね。とはいえわれわれ日本人もここまで情報をまとめて知る機会は少ない。あるとすればNHKスペシャルを見逃さないということくらいだろう。
ちょっと???という点もある。キリマンジャロの写真がいつ撮られたのかのデータがないのだ。夏になれば消えるのかもしれない雪。だからこんなに減っていますといわれても、何年何月何日に撮った写真なのかわからないといけないと思うのだが、そこに説明はない。書籍のほうの『不都合な真実』を買ってみたが、本にも表記はなかった。
それはきちんとした裏づけがあるとみるとして、これだけのデータがあるのであれば、なぜ、反対している人間がいるのか。環境問題の某研究者によれば『デイ・アフター・トゥモロー』みたいに、信じない科学者や政治家は、いまだ本当にいるらしい。そして同じ議論を延々と続けているらしいのだ。ゴアはそんな議論をしているべきときではないというのだが。
そして、ゴアはいう。もう間に合わないかもしれないからといって、あきらめてはいけないと。間に合わないから今のままでいいやではなく、何ができるか考えようと。
おっしゃるとおりである。省エネすれば、自分の懐だって傷まないわけだし。石油も枯渇するかもしれないし、それを先延ばしにするためにも省エネは大事だ。というわけで、アメリカのみなさまには、日本車や日本の家電などをぜひご購入いただければと思うわけだ。だからってスーパー301条とかかけないでね!
……しかし、現実問題として、ゴアが言うとおりに自然エネルギーとバイオと省エネで、地球温暖化問題は解決できるんだろうか。