映画『不都合な真実』を引っさげて、ブッシュに接戦で敗れた前副大統領という立ち直れそうにないレッテルを拭い去り、見事、社会復帰を果たしたアル・ゴア。先日は議会で地球温暖化対策を訴えてきたようである。
ゴア前米副大統領、議会に地球温暖化対策求める(CNN)
http://www.cnn.co.jp/usa/CNN200703220004.html
Star in New Role, Gore Revisits Old Stage(NYT)
http://www.nytimes.com/2007/03/21/us/politics/21gore.html?pagewanted=1&_r=1&hp
http://www.nytimes.com/2007/03/21/us/politics/21gore.html?pagewanted=2&_r=1&hp
Gore Warns Congress of ‘Planetary Emergency(NYT)
http://www.nytimes.com/2007/03/22/washington/22gore.html
もめにもめながら、京都議定書ができたのも、基本的にはゴアが日帰りで来日した結果だったわけで、映画を見てもわかるように、これは彼のライフワークなのだ。当時のクリントン大統領は、こと環境問題に関しては、彼の政策に乗ったというのが正しい見方だろう。
ブッシュ政権になるとこの方針はすべて覆されるわけだけれども、こんなトホホなニュースを見つけた。
米政府の温暖化報告書 “不都合な真実”書き換え認める(産経)
http://www.sankei.co.jp/kokusai/usa/070320/usa070320010.htm
驚きもしないんだが…。
そんなわけで、映画界からも、マドンナからも(笑)、2008年大統領選への出馬を熱望されるゴア。出る考えはないといいながらも、世論調査ではヒラリー、オバマについで3位を確保している。
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先日、レンタルで『10 MINUTES OLDER
』という映画を見た。「世界各国の巨匠監督が手がけた10分間の短編を集めたオムニバス作品集」(amazonより)で、その中にはスパイク・リーの『ゴアVSブッシュ』が含まれている。2000年の大統領選での、ゴア側の関係者の話を組み合わせたドキュメンタリーだ。
それを見ていて、正直、腹が立ってきた。
ご存知のように、ゴアは、ブッシュ弟が知事を務めるフロリダ州の選挙人が獲得できず、総得票数は上回っているにもかかわらず、ブッシュに負けた。だが、本当のところは、負けたと宣言したから負けたのだ。
『ゴアVSブッシュ』によれば、当初、テレビはフロリダでゴアが勝利し、次期大統領はゴアに決まったと報じた。しかし、その後、NBC(だったと思う)がブッシュ勝利と報じ、その後、他局もそれに準じた。
ゴアはそれを見て絶望し、敗北宣言をしようとする。しかし、徐々に票差が縮まっていくのを見ていたスタッフは、敗北宣言をするために登壇しようとするゴアを半ば強引に引きとめる。そして最後までがんばろうということになった。その後、1ヶ月ほど数えなおしをしたりしなかったりして、連邦最高裁まで巻き込んで、大いにもめにもめたが、最終的にゴアは敗北宣言をすることになる。結局、最初に負けたと言いそうになったことをみんなが覚えていたのだ。
疑問に思うのは、なぜ、テレビが当初、ゴアの勝利を伝え、その後、ブッシュの勝利としたのか・・・というよりそれがなぜわかったのかだ。そんなに接戦であれば、途中でわかるはずもない。場所はジェフ・ブッシュ知事のフロリダ州。しかも報道したNBCは確か保守系で有名なTV局。だからブッシュ陣営が情報を流したとしか思えないのだ。ゴアはええかっこしいだから、引き下がると見たんだろう。見事な心理作戦である。
まんまとひっかかり、ええかっこしいが裏目に出たゴア。そのおかげで、今、このような世界になっている。
たとえ大統領がゴアであっても9.11は起きたんだろうと思う。9.11陰謀説を採らなければだが。そうなった場合、ゴアもアフガニスタンは攻めたかもしれない。だがイラクはどうだろうか。多分、イラクに行く理由を見つけるくらいであれば、アフガンをなんとかしようと思っただろう。石油価格もこうまでは上がっていなかったかもしれない。日本には相当冷たかっただろうが、少なくとも自衛隊はイラクに行かなくてすんでいたはずだ。
イラク、イラン、北朝鮮を悪の枢軸とよんだブッシュは、「できるだけ戦争をせずに世界を制定する」ことに主眼が置かれていた冷戦時代の大国の動きを変え、「戦争をしかけて力づくで制定する」という方向へと舵を切った。それが世界の勢力図を大きく変えてしまった。その流れは冷戦体制が崩壊したときから始まっていたんだろうけど、決定付けたのがブッシュなのだ。
だから、ブッシュに政権を与えてしまったゴアにも、今の世界を作った責任は充分あるし、その責任を取るべきだと思うのだ。責任を取るというのは、きちんともう一度大統領選に出て、大統領になって、世界を立て直すって意味ですけどね。地球温暖化を訴えるのもいいけれど、大統領になることこそがゴアさん、あなたの責任の取り方なんじゃないですかね?
こんなこと書いているけど、マドンナみたいに、ゴアを支持しているというわけではなくて、どうせ次が民主党ならばゴアがベターなんじゃないかという程度の話。でも、ブッシュを2回も選んだ国民だから、またぞろ「ゴアは退屈」とか言われるんですかね?