日本でもバイオ燃料が試験的に発売されるようになったようだ。石油連盟と環境省で、その燃料の組成でもめているらしく、今度発売されたのはどっちなんだろうとゆるく考えている。環境省はガソリンに3%エタノールを混ぜるE3を推薦しているが、光化学スモッグが出たり、腐食が進んだりするのでだめだとして、石油連盟はETBEというのを進めているらしい。どうでもいいが、世界はどっちだ? 日本の自動車産業のためにも国際水準で行っておいてほしいものだが。
いずれにせよ、石油価格高騰と地球温暖化対策で、アメリカをはじめ欧米を中心に世界各国がこれから推し進めようとしているバイオエタノール。しかし、そのおかげで案の定、食糧のほうが大変なことに。
ZAKZAK タコスめぐりメキシコで騒動
http://www.zakzak.co.jp/tsui-sat/tsui/20070428_01.htm
バイオ燃料が影響 独ビール値上げへ 導入拡大→大麦の生産減、高騰
http://www.business-i.jp/news/world-page/news/200704280033a.nwc
世界一のバイオエタノール先進国、ブラジルが輸出を進めているものだから、砂糖価格が高騰しているというのは聞いていたが、タコスもビールもですよ。そのうちバーボンもウイスキーも値上げになるな。多分。アルコール係数の高い我が家にはかなり痛い(笑)。コメも値上がりするかも。でもそうなったら日本の米農家は助かるからいいか。
USFL 世界に広がる食品インフレ~バイオ燃料の需要増で
http://www.usfl.com/Daily/News/07/04/0411_019.asp?id=53168
朝日 バイオガソリンの増産 食糧問題の引き金になる可能性も
http://www.asahi.com/business/update/0426/TKY200704260300.html
こんなにやっても本当に供給できるのはちょっとらしい。
CNET とうもろこしや大豆を燃料とするのは非現実的--全米科学アカデミー会報で発表に
http://japan.cnet.com/news/biz/story/0,2000056020,20170308,00.htm
2005年に米国で生産されたとうもろこし全てがエタノール産出のために費やされたとしても、同国で必要とされるガソリン量のうち12%しか供給できないと、同報告書には書かれている。もし大豆作物が燃料として消費されても、米国のディーゼル需要の9%を供給するに過ぎない。
バイオ燃料にはもうひとつ、地球温暖化対策という大儀名文がある。バイオ燃料は燃焼してCO2を出しても、再生可能だからという理由で「カーボンニュートラル」な燃料とされている。
環境省 E3のCO2削減費用対効果の試算
http://www.env.go.jp/earth/ondanka/renewable/03/mat_02.pdf
先に引用した全米科学アカデミー会報の記事でも
作物を収穫し、処理するために必要なエネルギー量と比べると、とうもろこしエタノールの場合は25%、大豆ディーゼルの場合は93%多くエネルギー量を提供できるという。
としているのだが、そうでもないらしい。
読売 期待満タン、バイオガソリンがきょう4月27日発売
http://www.yomiuri.co.jp/atcars/news/20070427ve04.htm
カリフォルニア大学のアレクサンダー・ファレル助教授は昨年1月、米科学誌サイエンスに発表した論文で、燃料をガソリンからエタノールに切り替えた場合、温室効果ガスの排出量は最大32%減らせるが、逆に20%増えることもあると述べている。
バイオエタノールの原料となるトウモロコシやサトウキビなどの耕作には、燃料が必要な農業機械が使われ、エタノールをプラントなどで生成する際も石油などが使われるからだ。
「トウモロコシを原料にしたエタノールのエネルギー量よりも、その生産にかかるエネルギー量のほうが多い」。コーネル大学のデイビッド・ピメンテル教授はさらに懐疑的な見方を、欧州の専門誌に発表している。
国内でも、産業技術総合研究所ライフサイクルアセスメント研究センターが、生産から輸送、使用までの全過程で出る温室効果ガスの量を、ガソリンと100%エタノール(E100)で比較した。
国内で使うエタノールをタイ産サトウキビで作るという想定で、その結果はエタノール製造にかかる温室効果ガス排出量は、ガソリンと比べて39%減から8%増とばらついた。エタノール生産でガスが増えてしまう理由は、CO2の数百倍の温室効果を持つ亜酸化窒素が、耕作に使う肥料から出るからだ。
つまり、バイオ燃料ブームというのは、結局CO2対策じゃなくて、石油代替なんだよね。だって最終的にCO2は出すし、CO2排出量を減らすことができるのはそう多いわけではなさそうだ。そして、そのために、たとえばCO2を吸収しているブラジルの密林がさとうきび畑になっていたら、まったく意味がないわけで・・・。
環境問題のこれまでとこれから(NTTデータ経営研究所ホームページより)
http://www.keieiken.co.jp/monthly/2006/0612-3/index.html
ブラジルではアマゾン川流域において、2003年8月から2004年8月までの1年間で2万6130平方キロメートルもの森林が伐採されたと報告されている。その目的はさとうきびづくりであるが、さとうきびは必ずしも食用のためだけに栽培されるのではなく、エネルギー作物としてバイオエタノールを生み出すためにも活用されている。
石油は一番大事で使いやすいエネルギーなので、石油高騰にともなってほかにも、石炭ガスから石油を作ろうとか、ガスから石油を作ろうとか、いろいろな動きがある。バイオであれば、化石燃料ではないので、再生できるからイイ!というわけだが、よく考えたら、普通の食糧だって太陽エネルギーだけで生産しているわけではない。
当初、欧米で進んだバイオマスは、家畜の糞とか、木屑とか、さまざまな残りかすとか、そういったものを最大限使おうということで始まったと思われるが、石油価格高騰に加え、石油枯渇の不安が見え隠れする昨今、その真の理由は「石油」に移り、CO2は食糧高騰の言い訳にすぎないのではないかと懸念している。そして持てる者はさらに豊かに、持たざるものは食べものにすらありつけなくなるわけだ。
じゃあ、どうすりゃいいのかって? それはわからないんだけど。