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March 22, 2008

人種問題とダライ・ラマとリチャードソン

2つ前のエントリでオバマの人種問題演説について、1つ前のエントリで大統領候補のチベット問題関連発言について書いたのは、ワケがあった。なんとなく、この2つはつながっているような気がしていたのだ。まだ、うまく私の中で整理できていなくて、どちらも大して練れたエントリじゃなかったんだが、同じ流れの中にあるような気がして、書いておいた。

流れというのはちょっと前のオバマブームのような熱狂的かつ単純なものではない。そうではなく、経済危機やイラク戦争やチベット問題の奥底で、金融資本主義への深い反省と、そのために置き去りにされた人権の再見直しをはじめようというコモンセンスの醸成が静かに進んでいるという、そんな流れ。アメリカのマスコミとか、金融資本主義者とかは気づかないうちに、中国のやり方に眉をひそめ、金融資本主義者が巻き散らかすはた迷惑な経済危機を憂慮し、ネオコンの強欲ぶりに辟易としている人々が、いよいよ行動を始めようというそんな流れだと思う。アメリカ国内の話なんだが。

そこにまず、米国の人種問題が持ち上がった。たぶんこれをあげつらった人々は、これでオバマがつぶせるとほくそ笑んだことだろう。何しろライト牧師の演説は、この私ですら眉をひそめたくなった。だが、薄っぺらな報道が繰り返されていくうちに、なぜ虐げられた人々(黒人)が、虐げる人々(白人)を「くそ野郎」と言ってはいけないのか、という疑問がわいてくるわけだ。虐げる人々は、虐げられている人々にそれを言ってはいけないという。愛国心の名の下に。

翻ってみると、これは中国がチベットに対して言っていることと同じなのだ。結局、人種だろうがなんだろうが、問題になるのは力や体制を味方につけて支配する側と、それによって支配される側の関係なのだ。この関係では、ほとんどの場合において支配される側の意見のほうが支持されてしかるべきである。白人対黒人、男性対女性、中国対チベット。構造はすべて同じなのだ。日本が中国や韓国に卑屈な態度をいまだにとっているのも、その見識があるからだろう。まあ、日本はもうちょっとちゃんと言ったほうがいいと思うけどね。

だからこそチベット問題について、オバマは大統領候補者の中で真っ先に、そして一番強く中国を非難した。その後、たぶん後世に伝えられるであろうあの人種問題演説を行った。米国建国の地、フィラデルフィアで。

そして今日、リチャードソンが驚くべきことに、このタイミングで、オバマ支持を表明した。リチャードソンといえば、ヒスパニックで、クリントン大統領時代に閣僚を務めた人間である。大統領選撤退後は態度を表明していなかったものの、ヒラリー以外の選択をすることはなかなか難しかったんじゃないだろうか。何しろ、ヒラリーの票はこれまでのところヒスパニック頼り。リチャードソンがオバマを支持すれば、その票のいくばくかをオバマに鞍替えさせる力となるだろう。

リチャードソンがなぜ、オバマを支持したのか。

NYT Richardson Plans Obama Endorsement
http://www.nytimes.com/2008/03/21/us/politics/21cnd-endorse.html

Mr. Obama’s address on race in Philadelphia on Tuesday appeared to sway Mr. Richardson, who sent word to the senator that he was inspired and impressed by the speech, in which Mr. Obama called for an end to the “racial stalemate” that has divided Americans for decades. Aides said the endorsement was locked down over the following two days.
火曜日にフィラデルフィアで行われたオバマの人種問題に関する演説は、リチャードソンの心を揺らした。リチャードソンはオバマに、彼がとても演説に感銘したとの言葉を送った。演説で、オバマは何十年とアメリカ人を引き裂いてきた人種的障害を終わりにしようと呼びかけたのだった。協力者はリチャードソンの支持が2日以内に固められるであろうと述べた。

もう一人、大統領候補者で、オバマの演説に感銘を受けた人がいる。ジョー・バイデンだ。

ワシントンポスト Obama Urges U.S.: 'Move Beyond Our Old Racial Wounds'
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2008/03/18/AR2008031800200.html

Sen. Joseph R. Biden Jr. (Del.), who competed against Obama in the Democratic race, praised the speech as a powerful statement about racial relations. "He told the story of America -- both the good and the bad -- and I believe his speech will come to represent an important step forward in race relations in our country," Biden said in a statement.
ジョゼフ・バイデンはかつて民主党大統領選で戦っていたが、この演説を人種関係についてのパワフルな声明だとして賞賛した。「彼はアメリカの歴史を語った。良い面も悪い面も。そして私は彼の演説がこの国の人種関係に向けた重要なステップとなると信じている」。バイデンは声明の中でこう話した。

民主党の重鎮の中で、オバマの人種問題演説はこのように高く評価され、オバマへの支持が静かに広がっている。

そして米下院議長ナンシー・ペロシのダライ・ラマとの会談である。

ペロシは先日、オバマが人種問題に足をすくわれているころに、「スーパー代議員が一般投票と反対の行動をしたら、民主党は深刻な事態を迎えるだろう」と発言し、実質的にオバマ支持を表明している。そのペロシがインドへ向かい、チベット騒乱以来、世界の主要政治家として初めて、ダライ・ラマに謁見した。

ワシントンポストPelosi Denounces China's Tibet Crackdown
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2008/03/21/AR2008032100405.html

"The situation in Tibet is a challenge to the conscience of the world," she said.
「チベットの現状は、世界の良心を試している」と彼女は言った。

"Perhaps it our karma, our fate, to be with you at such a sad time," Pelosi said. "It is our karma, we know, to help the people of Tibet."
「たぶんこれは私たちの業であり、運命である。こんな悲しいときにあなた方とともにいるのは」とペロシは語った。「私たちの業なのです。チベットの人々を助けることは」

ヒラリーは中国との関係が深いため、チベット問題に対して強い態度を取れていない。フランスをみても、サルコジ大統領も経済を優先するために、オリンピックの「開会式」のボイコットを示唆するところまでしかできていない。このままヒラリーになれば、経済を優先するために、民主党の真髄であろう「リベラル」を捨てることになる。それよりも何よりも、西側諸国が、経済のために中国の横暴を認めることになってしまう。

ロイター チベットの騒乱、中国経済の影響力を前に西側諸国は沈黙か
http://jp.reuters.com/article/worldNews/idJPJAPAN-30925220080320

西側の「人権」なんてそんなモンだろうと思うが、ここはペロシが言うように「世界の良心」が試されている正念場だと思う。

ヒラリーになれば、ロスとかロックとかの大資本は喜ぶだろうし、中国も喜ぶだろうが、自由の国アメリカがそれでいいんですかね? そしてアメリカの属国の日本は、中国と仲良くしたいためにチベットを黙殺している。

リチャードソンはオバマ支持表明の中で、「分裂している場合ではない」とヒラリーに自制を求めた。だが、ABCニュースでは、ボーリングに興ずるペンシルベニアの白人労働者が、ライト牧師の演説は見たがオバマの演説は見ないまま、ヒラリー支持を決めようとしていた。金融資本主義者の愚民政治はまだまだうまくいっているようだ。

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Comments

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YSBEEさん、ありがとうございます。

英語で書きたいところなんですが、英語では言いたいことの半分も言えなそうな気がします。こういう時、日本語は発信力ないですよね。ホント、英語力を磨かないと。

とはいえアメリカは、ペロシがダライ・ラマに会ったりする行動力があるわけで、さすが大国だと思っています。確かにオリンピックをボイコットすれば、中国の嫌がらせによる米国債の暴落、ドルの暴落は目に見えているわけで、たぶんそれはペロシだってわかっていると思います。でも金融資本主義者が言うほどひどいことになるのかどうかはわからないですよね。

そうなったらまた、日本が買い支えるんでしょうか(苦笑)。まあそうでも、日本はその貸しを高く売るべきだと思いますが、どうなることやら。何しろヘッドがフフフですから。日本人の無力感とそこからくる絶望は、アメリカの人種差別問題と同じくらい大きいかもしれません。

Posted by: jin | March 22, 2008 at 12:56 PM

Jinさん、私が書きたかったことを見事にまとめてくれました。両肩の荷が下りたような感じです。
この文章をそのまま英文に直して、米国のオピニオンブログに載せたら、きっとばたばた〜っと推奨のマークがつきますよ。

ほんと、この微妙な人種問題と、グローバル経済と、ユダヤ資本の脈絡が、実によくまとまっている。オバマ陣営の外交顧問は、私も随分以前から注目していたズビグニュー・ブレジンスキーという、すごいキレ者のブレーンです。彼の周囲には、こういったベテランの「良いブレーン」がそろっているので、その点も支持する理由のひとつ。

リチャードソンがついたことで加速がついて、2・3日中にジョー・バイデンも支持表明するんじゃないでしょうか。先週の人種問題の地雷を切り抜けて、今週はムフフなニュースが続きますね。
ではまた!

Posted by: 米流時評 ysbee | March 22, 2008 at 11:47 AM

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