« グルジア関係メモ | Main | 新冷戦で勝つのはどっちだ? »

August 16, 2008

グルジアと米大統領選

グルジア紛争で少し注目がそがれた感のある米大統領選だが、紛争自体が外交力という点で大統領選の一つの焦点にもなってきそうだ。グルジア問題が発生するとすぐに、マケインがロシアを非難するなど積極的に発言したのに対し、オバマはハワイ休暇中だったために声明を出した程度。あまり迅速な動きとはいえなかったようで、外交の経験不足が露呈したと言われているようだ。

毎日 南オセチア衝突:米大統領選に余波 対露政策が争点に
http://mainichi.jp/select/world/news/20080816ddm007030057000c.html

CNN グルジア問題で対ロ関係の全面見直しを要求、マケイン氏
http://www.cnn.co.jp/usa/CNN200808140026.html

McCain seeks lift from crisis in Caucasus
http://www.ft.com/cms/s/0/eb9a5fc8-6b2a-11dd-b613-0000779fd18c.html

USAToday For candidates, Georgia crisis provides a revealing audition
http://blogs.usatoday.com/oped/2008/08/for-candidates.html

WAPO McCain's Focus on Georgia Raises Question of Propriety
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2008/08/14/AR2008081403332.html

NYT Foreign Policy Watch on Georgia
http://campaignstops.blogs.nytimes.com/2008/08/14/foreign-policy-watch-on-georgia/?hp

マケインと盟友のリバーマンも攻撃中。

Reuters Lieberman: Obama shows “inexperience” over Georgia
http://blogs.reuters.com/trail08/2008/08/12/lieberman-obama-shows-inexperience-over-georgia/

ただ、マケインのアドバイザーが、グルジアの外交アドバイザーも努めていたようで、そこには批判もある。

NPR McCain's, Adviser's Ties To Georgia Questioned
http://www.npr.org/templates/story/story.php?storyId=93631243

というわけで、オバマ、ちょっとミソつけたよなあと思うのだが、しかし妙にのんびりかまえている、オバマの対応が気になるわけだ。外交力というか軍事的な外交力が疑問視されていて、そこが弱点であるにもかかわらず、なぜ?

何しろ、オバマのバックにはかのブレジンスキーがいるわけだ。ロシア包囲網はブレジンスキーの戦略だといわれているし、ロシアのグルジア進攻の危険性については、ブレジンスキーが指摘していた。

阿修羅 「ロシアはBTCパイプライン支配のため、グルジア不安定化を狙っている」ブレジンスキー
http://www.asyura2.com/08/wara3/msg/130.html
阿修羅 2003年11月のグルジアの「薔薇の革命」を主導した米国のユーラシア戦略と米露冷戦の始まり
http://www.asyura2.com/0403/war53/msg/756.html

だから、オバマがおとなしくしている理由って何だろうと思うのだ。ブレジンスキーにアドバイスを聞かないわけがない。

と、思っていたら冷泉彰彦さんのメルマガでもこの話題が取り上げられていた。

冷泉さんによると、かつてロシアであったチェチェンによる小学校占拠テロは、実は北オセチアで発生したことだった。で、あのテロによって、ロシアはテロの被害者、ということになっているわけだが、オセチアはもともと、スターリンがチェチェン人を迫害して追い出している間に、オセット人が入植してしまったために紛争が絶えない地域になっているそうだ。今回の事件は「テロの被害者という「思い入れ」の対象であったオセット人の安全を守るという口実で、ロシアがグルジアに介入したという構図」だという。

全文は登録(無料)して読んでほしいのだが、長文なのでとりあえず、大統領選がらみで気になったところをピックアップしてみる。
 登録はこちら→ JMM  http://ryumurakami.jmm.co.jp/

さて、今回の危機を受けて勢いづいている政治家がいます。それはジョン・マケインで、8月11日の月曜日にはペンシルベニア州の西北端の町エリーでの演説会で、「グルジア支持」の大演説をぶっています。
(中略)
マケイン陣営に関しては、グルジア国内を通っているBTCパイプラインがらみの利権との関係が言われていますが、このパイプラインに関しても「絶対に守りきる」と言明、更に自分が大統領になったら「グルジアとウクライナのNATO加盟を強力に推進したい」とかなりボルテージが上がっていました。
(中略)
そのマケインは、他でもないグルジアが侵犯を受けたことで、ロシアを仮想敵に「戦う大統領」というイメージを売り込もうとしているようです。
(中略)
仮にマケインが大統領になったら政治的な駆け引きとして「どうやって対ロ強硬姿勢を貫くのか?」という肝心の部分が全く見えません。ヨーロッパはロシアとの全面的な対決は望んでいないし、ロシアを敵に回してはアフガンの反タリバンの戦いを進めるのも困難になります。それ以前の問題として、アフガンではNATO軍としてヨーロッパに犠牲を強いている中、彼等の意向に反してロシアへの強硬姿勢を強めることができるのかは疑問が残ります。原油価格という人質を取られているという現実も見過ごせません。

というわけで、マケインが強硬論を話せばまあ勢いは出るわけだが、じゃあどうするのか?という結論は見えないと指摘している。

で、オバマというかブレジンスキーだ。

 では、オバマはこの問題に関してお手上げなのでしょうか。表面的には、7月の欧州訪問で「米欧関係の修復」をブチ上げていますから、今回の一件でも「ロシアとの本格的な冷戦」は望んでいないフランスやドイツの立場に近いようにも見えます。ですが、けっしてそれだけではないという見方もあります。マケインとは全く違う青写真を持っている可能性もあるのです。例えば、オバマ陣営の外交政策に関するアドバイザーは、ズビグネフ・ブレジンスキーで、はるか昔カーター政権当時の大統領補佐官を務めていた人物です。このブレジンスキーという人は、民主党のブレーンの中でも相当な策士と言って良いでしょう。カーター政権当時は、対ソ連の戦略核削減交渉を進める一方で、そのソ連がアフガニスタンに侵攻すると直ちに対決姿勢を鮮明にするなど、冷戦末期から現代に至るアメリカのこの地域の外交の基調に深く関与している人物でもあります。

やはりブレジンスキーに注目している。で、ブレジンスキーの戦略は、共和党ネオコンの戦略どころではない、長期的で冷たく断固とした戦略なんだそうだ。

そのブレジンスキーは、1999年以来「チェチェンに平和をアメリカ委員会」という組織を立ち上げ、ヘイグ元国務長官や、ワインバーガー元国防長官など民主・共和の大物ブレーンから、いわゆるネオコン的な色彩の濃い人間まで多くのメンバーを引き込んで活動しています。
(中略)
この「委員会」ですが、最近その名称が「コーカサスに平和をアメリカ委員会(ACPC)」と改められています。そして、従来はチェチェンだけであった活動対象が、イングーシや今回の問題に深く関わっている北オセチアも対象に含むとしているのです。名称変更の理由としては、恐らくチェチェンに関しては一連のテロを指揮していた(とされる)地下のリーダーのバサエフや、その時期の地上のリーダー、マスハドフがロシア軍に殺されて全体的な対立エネルギーが下がっていること、その一方で特にオセチアの問題が浮上してきていることからでしょう。
(中略)
どうやらこのブレジンスキーに取っては、この「委員会」の活動は大きなテーマのようで、そこから考えるとオバマの外交もこの「委員会」の方針に近いものになると思われます。
(中略)
この「委員会」の言っているのはコーカサスといっても山脈の北麓にあるチェチェンやイングーシ、北オセチアを「自由化」しようというのです。これは19世紀以来のロシアが「固有の領土」だと信じて疑わないエリアであり、いかに漢方薬的な正攻法だと言っても、そこに楔を打ち込むというのは大変な問題になるのです。冷戦の「冷たさ」という意味では、これは共和党の戦略の比ではありません。例えば、仮に北オセチアが「自由陣営」に変わり、そこに南オセチアが連合をし、その関係をグルジアが承認し、チェチェン=イングーシとの国境紛争も終結する、そんな事態が到来したら、ロシアの政治的軍事的失点は巨大なものになるでしょう。

まあ、とはいえオバマが完全にブレジンスキー戦略にのるかどうか、それは現時点ではわからないわけで。

オバマが今回の危機に関して悠然としているのは、マケイン陣営が非難するように「経験不足」からなのではなく、ブレジンスキーという大物と一緒にある意味では壮大な戦略を持っているからに他なりません。

というわけで、冷泉さんの分析はこちら。

(ブッシュ)ロシアの南オセチア・アブハジアでの権益を承認。西欧とも協調して何とか「手打ち」を模索。
(マケイン)グルジア防衛の大義からロシアとの冷戦も辞さず。場合によってはグルジアのサーカシュビリ政権による南オセチアとアブハジアの「回収」を支持する可能性も。
(オバマ)西欧の穏健論に協調して当面の事態は静観するが、(仮にブレジンスキー委員会の提言を採用するとして)中長期的には北コーカサスにも「手を突っ込んで」高度の「人権外交」へ。緊張が高まればコソボ同様にNATOの枠組みを押し出すことも。

ふ〜む。問題は大統領選はあと2ヶ月ちょっとってことなんじゃないかな。ブレジンスキー戦略はいいけど、それは一般にはわかりにくいだろう。だからオバマもあまり悠然としていると、対応力がないと思われないだろうか。支持率もマケインが迫ってきているわけだし、グルジア情勢いかんでは、どう動くかはわからない。なにかアピールできるようなことがないとだめなんじゃないすかね?

REAL CLEAR POLITICS
http://www.realclearpolitics.com/epolls/2008/president/us/general_election_mccain_vs_obama-225.html#polls

|

« グルジア関係メモ | Main | 新冷戦で勝つのはどっちだ? »

ニュース」カテゴリの記事

米大統領選」カテゴリの記事

経済・政治・国際」カテゴリの記事

Comments

Post a comment



(Not displayed with comment.)


Comments are moderated, and will not appear on this weblog until the author has approved them.



TrackBack

TrackBack URL for this entry:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/29180/42181797

Listed below are links to weblogs that reference グルジアと米大統領選 :

« グルジア関係メモ | Main | 新冷戦で勝つのはどっちだ? »