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January 19, 2009

善と悪 パレスチナとゲバラ そしてオバマ

最近映画づいていて、といってもそう見ているわけじゃないんだが、今月だけで『僕らのミライへ逆回転』と『チェ 28歳の革命』と『007 慰めの報酬』を映画館で見たし、DVDでだけど『CHE』の前には『モーターサイクルダイアリーズ』も鑑賞し、『慰めの報酬』のあとには『007カジノロワイヤル』も見直してみた。まあその他の映画もいろいろと見てみたわけだ。

CHEと007がやはり印象に残るのだが、こうした映画と、現在のパレスチナ情勢などもみつつ思うのは、この世の中、善悪がわからなくなってきているなということ。これは『慰めの報酬』でも繰り返される言葉だ。

今回の007は、ボリビアを舞台に展開される政治的取引をめぐる話だ。諜報員は国益を代表しているはずなのだが、国益は必ずしも善ではない。ダニエル・クレイグが演じる一途でちょっとナイーブなボンド(007の形容としては変だな…)は、善に向かってつき進むのだが、英米は国益に揺れる。

国益と善が一致しないことは昔からあったことかもしれない。日本が第二次世界大戦に突き進むことになったのも、その行為は相手側からすれば悪かもしれないが、欧米に搾取されるアジアの状態をみれば、日本にはそれなりの国際事情があった。すべてではないにしろ、国益上、そして大義としても、やらざるをえない事情があったはずだ。

CHEの1作目はゲバラの革命戦記になっているわけだが、『モーターサイクルダイアリーズ』のエルネストから想像していくに、エルネストがチェになるまで、つまりここまでの革命戦士になるには、相当な葛藤があっただろうなと思う訳だ。善と思うもののために人を殺すわけだし。戦争というのはある意味、大義という「善」がないとダメなのかもしれない。

しかし、ジョージ・W・ブッシュが始めたイラク戦争には大義はなかった。あったとすれば国益、しかもごく一部の人々のための国益だ。そのためにイラク国民は多大なる犠牲を払い、アメリカ国民もイラク国民ほどでないにしろ犠牲を払い負担となっている。

イラク戦争のおかげで、まあ、もちろん911が謀略であれば911のおかげでもあるが、善ではなく利益が最優先されるようになってしまった。見せかけでも欧米諸国にはあったはずのプリンシパルがなくなり、世界は007が描くボリビア、ゲバラが嘆く南米における権力者の搾取と同じ土俵に立ってしまっているような気がしてならない。007は欧米の政府自体がそうなりつつあることを描いているわけだけど。

そしてイスラエルとパレスチナだ。イスラエルは欧米的見方をすれば「善」の側に立っていたはずだ。善というか迫害の被害者だけど。だから欧米はイスラエルのやることを大目に見てきた。自分たちの負い目もあったし、それこそ中東に欧米側の国という国益もあって、パレスチナに入植地を作っても大目に見、核兵器も秘密裏に提供してきた。

だけど、とうとうガザをあのように攻撃してしまった。イスラエルは迫害の被害者だけに恐怖感が増幅しているのはわかる。だが、迫害された側が、同じように迫害していいという話ではないはずだ。しかも極右政党の党首は「アメリカが日本に行ったようにハマスを屈服させろ」などと発言し、イスラエルの政権側ではないにしろ、核兵器の使用までにおわせる始末。広島、長崎の核兵器使用に大義はないし、東京大空襲も含めて大量虐殺を禁じる国際法に違反しているわけだが、そんなことは有耶無耶にされているので、国際法なんて、もはやかまわないのかもしれないけど。

時事「ハマスを日本のように屈服させよ」=イスラエル極右党首
http://www.jiji.com/jc/a?g=afp_int&k=20090114020727a

今、ゲバラが生きていたらパレスチナに向かっていたかもしれない。もちろんパレスチナは南米じゃないが、何しろ、今、大義はパレスチナにある。そして、欧米の力は衰えつつあるのだ。なお、007にもボリビアが舞台であるだけに、ゲバラと思われる人物を語る台詞がでてくる。キューバ革命50周年ということもあるが、現代においてゲバラに人気が集まる理由は、善悪の分別がなくなった世界情勢にあるのかもしれない。

前にも書いたが、ゲバラのスローガンは「一つの混血のラテンアメリカ」だった。そう、北か南かが違うだけで、オバマと同じなのだ。常套句なのかもしれないし、オバマはゲバラの著作も読んでいるだろうけど。

そしてオバマの登場を待つかのように、外交でも経済でもいろいろな難問が生じている。しかしオバマもなんだか外堀を埋められているようで、今では身動きが取れなくなっているように見える。だからクリントン政権風味はだめだってば、と思うんだが、人材もいないしね。もう、ここは腹を決めてオバマの目から見た「大義」にかけるしかないようにも思うのだが(戦争をしろという意味ではない)、利益を優先し、善と悪の区別をなくしてしまった世界を変えることは、そう容易ではないだろう。

P.S.『僕らのミライへ逆回転』はタイトルはともかく面白いっす。念のため。

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