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July 21, 2009

マスメディアが消滅したあとの社会

9784166607082

"2011年新聞・テレビ消滅 (文春新書 708)" (佐々木 俊尚)






佐々木俊尚氏の『2011年新聞・テレビ消滅』を読んだ。弾さんが紹介していたので知ったのだが。

404 Blog Not Found
メディアにマスはいらない - 書評 - 2011年 新聞・テレビ消滅
http://blog.livedoor.jp/dankogai/archives/51235390.html

ネットが情報を無料化し、情報独占により稼いできた新聞や雑誌、テレビを殺すという、この話題、5年くらい前に花盛りだった。「ネットは新聞を殺すのか」という議論があったし、ブログもあった。時事の湯川さんでしたっけ。マスではないけれどメディア業界の片隅にひっそりと生息している身分としては、この問題はかなり興味がある。

今、確実にネットは新聞を殺しつつあると私は思う。記憶に新しいところでは朝日新聞だって2008年度決算は営業利益は確保したものの、最終損益は139億円の赤字。テレビ朝日も同17億円の赤字となった。毎日新聞も赤字だったようだし、ほかの社も収益状況の激変具合に大きな違いはないだろう。

Findstar 朝日新聞社、3月期決算。当期純利益139億円の赤字。
http://www.findstar.co.jp/news/syosai.php?s=001586
るいねっと 朝日新聞社 2009年3月期決算
http://www.rui.jp/ruinet.html?i=200&c=400&m=207572
テレビ朝日 決算短信
http://company.tv-asahi.co.jp/contents/setnote/index.html

もちろん、こうしたマスメディアの凋落の原因はコンテンツがダメだったからーといえなくもない。記事内容についてネット上で批判される案件も多かった。でも、毎日の「WaiWai」みたいに確かにそりゃだめだろ〜と思うこともあったけれど、批判された記者に同情してしまう部分もあったりしたな。

まあ赤字決算には世界同時不況もかなり影響しているに違いない。でも、今の新聞やテレビや広告業界の状況は、記者や編集や営業が努力すれば、もしくは景気が回復すれば盛り返せるって話ではなくなっているような気がする。だってビジネスモデルが崩壊しているんだから。

『2011年新聞・テレビ消滅』は、新聞やテレビのビジネスモデルが崩壊しているという事実を丁寧に証明していく。アメリカの事例を出しながら、収益体制がどう崩壊していくのか、なぜ、収益が確保できなくなっていくかについて解説する。

詳細はぜひ本を読んでいただきたいのだが、このビジネスモデルの崩壊は流通を握れなくなったために起きている、と佐々木氏はいう。佐々木氏は流通という言葉ではなくコンテナと言っているが。ごく限られたコストの高い流通の場(新聞のページ数やテレビの不可逆性のある番組枠など)を独占することで、情報を高く売り、その利益で記者や制作者を確保してきたマスメディア。しかしインターネットによって流通自体が安くなりt規模が拡大し、情報提供に誰でも参加できるようになり、情報は無料化してしまった。今では誰でもいつでもインターネットからニュースをタダで拾うことができてしまう。昔は新聞を買うか、CM付きもしくは受信料を支払ってテレビを見なければならなかったのに。

ネットに流れているニュースだって、本来は新聞やテレビの記者が取ってきたものだ。しかし流通をインターネット側に握られたことで、新聞やテレビは小作人になりつつあると佐々木氏はいう。

この本の中で新聞記者が「われわれが情報の取捨選択をして一般市民にどの記事を読むべきか教えている」と話すところがある。メディア側の「上から目線」ぶりを描いているわけだ。本来、新聞側の情報の取捨選択は、限られたスペースの中で効率的に情報を伝えるためにあるので、市民に情報の取捨選択能力がないわけではないんだけど。

まあ、つまりこういう人が多い業界だからこそ佐々木氏は懇切丁寧に、「もうビジネスモデルは崩壊していますよ。これは不可逆の流れですよ」としつこいぐらいに説くのだ。これは業界の雰囲気として、まだなんとかなるかもしれないなんて思っているところがあるからだと私は思う。

そんなわけで地上デジタルが始まる2011年に、新聞もテレビも崩壊するのだと佐々木氏は言うわけだ。そして、業界を守るのではなく「最も良いメディア空間とは何か」を考え、創りだしたらどうかと提言する。

読み終わって、全くその通りだと思う反面、何かもやもやとしたものが残った。情報産業において、新たなビジネスモデルをつくるべきというのはわかるんだが、今のマスメディアが崩壊するのも時間の問題なのにそんな悠長に構えてていいのか? 

何を私は焦っているのか…。そこで買ったままになっていたクーリエジャポン7月号「サヨナラ、新聞」号を開いてみたのだが、そこに答えが書いてあった。「不正」である。

クーリエ・ジャポンの記事によれば、新聞購読者数が少ない国ほど不正が多いという。直接の相関関係があるかは不明だが、それなりの報道機関があれば、不正も少なくなるということだろう。

しかし報道機関に資金がなくなり、記者が雇えなくなり、つっこんで書いていく記者がいなくなったら(働いている記者が少ないって言う批判はさておいて)、不正はどれほどあふれかえるのだろう。ひとたび社会がそうなってしまうと、それをひっくり返すことは難しいんじゃないのか。戦前の日本の新聞が、大本営発表しか書けなくなり、ついぞ自分たちでそれをひっくり返せなかったのと同じように。

報道機関がなくなった世界に私は住みたくない。もちろん、今のままのマスメディアじゃなくていいし、もっと重要な報道をすべきとは思うんだが、今のマスメディアすらなくなったらどうなることやら。

イランではTwitterが活躍したし、ウイグル争乱の発端は何千キロも離れた場所の事件をYoutubeで見たからなんだけども、だからって市民ジャーナリズムが、現在の報道機関に代替できるかというとそうでもないだろう。

そうはいっても今さらみんなが新聞を読み始めるわけもなく、時間通りにテレビの前に座るわけでもない。でも報道は絶対的に必要なわけだ。市民もニュースを発信できるようになっているけれど、それをまとめたり、裏を取ったりする人も必要だし。

そんなわけで、今すぐ、強制的にでも、佐々木氏の言う「最も良いメディア空間」を見いだす必要がありそうなんだけど、そう簡単に見つかりそうにないところが悩ましい。ちょっと危惧しているのは、メディア業界内の人は「ビジネスモデル」といわれてもピンと来ない人が多いんじゃないかということ。いや、ただの思い過ごしだと思うけど…。そう…ですよね?

 

追記:アメリカでは2010年新聞滅亡がささやかれているようで。

Media Pub
新聞2010年終焉説を覆す収益モデル改革とは
http://zen.seesaa.net/article/122679947.html
Newspapaermagazineradio2010
←この図すごいんですけど!



New York Timesは1ヶ月5ドルの有料化を検討中らしい。

Media Pub
NYタイムズのオンライン版,月間5ドルの有料化を検討中
http://zen.seesaa.net/article/123234583.html

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