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January 11, 2012

服部先生と原子炉4S

東日本大震災と、それに伴う東京電力福島第一原子力発電所事故を目の当たりにすれば、原子力発電なんてもうまっぴらだと思うのは当然だと思う。原子力発電所が一度事故を起こせば、取り返しの付かない事態を引き起こしてしまうのだから。そして実際に起きてしまったのだから。

でもそう思っても、原子力を今、捨てられる状況じゃないってことも、仕方のない現実としてあると思う。いずれにせよ日本には資源がない。資源争奪戦に参戦し、第二次世界大戦に突入し、結果として負けたのだし、今でも資源がないことには変わりはない。原子力を推進してきたのも資源がないからだ。太陽光や風力を導入するのは大賛成だけど、それですぐ原子力のかわりになれるものではない。少なくとも10年は無理じゃないかな。原子力をやめるなら、今すぐ、春暁や尖閣諸島のあたりでガス田を掘ったほうが現実的なのだが。

エネルギー関係は専門分野で、なまなましくなってしまうので、あまりここで突っ込んで書かないようにしていた。でも、この本を紹介したいので、少し書いてみようと思う。

ツイッターでも時々、服部禎男という研究者について触れてきたが、この方の半生を描いたとも言うべき本が『「超小型原子炉」なら日本も世界も救われる!』である。著者は政治関係で著作の多い大下英治氏である。

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この本は、ありきたりな表現だが、頭を後ろから殴られたくらい、ガツンとくるものがあった。

実は、服部先生には1度だけ、20年くらい前にお会いしたことがある。とても元気な方で、右も左もわかっていなかった私に、砂漠にポツンと置いてもいい、それだけで何十年も運転ができる、とても安全な原子炉のことを教えて下さった。

当時(も今も)、なんの知識もなかった私は、ふ〜〜〜〜んくらいで終わってしまったのだが、実は、その裏には、服部先生の長い長い戦いがあったのだ。

服部先生が生涯をかけて取り組んできたのが原子力発電所の安全性であり、究極の安全な原子炉として考案されたのが4Sである。4SはSuper-Safe, Small & Simpleの意味。iPhoneの最新バージョンではない。

Wiki 4S (原子炉)
http://ja.wikipedia.org/wiki/4S_(原子炉)

4Sは簡単にいうと、出力2万キロワット程度の超安全原子炉。金属燃料で冷却にナトリウムを使う。この原子炉は発電側の出力をあげると、原子炉の熱出力も自動的にあがるので、運転制御がいらない。小型だから効率が悪そうだが、たくさん置けるために、今の原子力発電所の敷地内で今以上の発電ができるらしい。30年間燃料交換不要の、乾電池のような原子炉なのだ。

本を読んでいただくと、服部先生がいかに、今、徹底的に批判されている原子力業界で異端児として戦ってきたかがわかる。優秀なだけに潰されることなく、どこにいっても開拓者となり、新しい思想を持ち込んでこられた。服部先生のような考え方を原子力業界がきちんと取り入れてこられたら、福島の事故はなかった。本当に残念なことだ。

福島第一原子力発電所の事故によって日本人は原子力を捨てるかもしれない。そうだとしても、世界は原子力を求めていくんじゃないだろうか。世界では人口が70億人を突破し、エネルギーが枯渇しようとしていて、中東では戦争が起きようとしているんだから。ビル・ゲイツが原子炉会社テラパワーに出資する動機も、そこにあるんじゃないだろうか。

そして、ゲイツが東芝と組んだのも、この服部先生の4Sがあったからなのだ。

Wiki テラパワー
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%86%E3%83%A9%E3%83%91%E3%83%AF%E3%83%BC

だとすれば、今、日本にある安全な技術を広めていくことが重要なんじゃないだろうか。しかも、これは今後、日本で進むであろう発電のダウンサイジングのカギとなるかもしれない。ウラン238も使えるそうなので、世界平和にもつながるかもしれない。

そもそも原子力発電の仕組みはずっとこのままなのか? こんなことが起きる前だって、原子力は設計に進歩がないという指摘があった。もちろんAP1000など安全性を高めたといわれる新しい大型炉はあるけれど、ここで考え方をガラっと変えてみてはどうなのか。

服部先生は電力中央研究所で乾式再処理も手がけてこられた。これならば日本が核兵器開発の疑いをかけられることもなく、六ケ所村の再処理施設のコストも抑えられたそうだ。これはエネルギー業界ではよく言われていた話ではあるのだが。加えて言えば、放射線ホルミシスの研究が始まったのも服部先生がきっかけである。しかも世界的なレベルの話である。

日本において今後必要になってくるのは、廃炉となる福島第一原子力発電所4基を含めた最終処分の部分だけれど、こういったところに関しても服部先生のお考えを伺いたいところだ。今の政府は、日本の電気事業のあらゆることを見直そうとしているようだが、それならば服部先生の考えを取り入れていくことも大事だと思う。


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