February 19, 2012

テオ・ヤンセンのミニビースト作ってみた

学研の「大人の科学」VOL30 テオ・ヤンセンの「ミニビースト」を作ってみた。

これを買うまでに半年以上の躊躇があった。なにしろ、怠惰な子供時代と同じく、こういう工作ものってあっても作らないほうなんで。「大人の科学」の蓄音機バージョンを買ったままそのままにしているという心の傷もあるし。子どものころから実験やら工作やらは嫌いで、理科の実験も誰かがやってるのを見ていただけだし、プラモデルなんて作ったこともない。まあ女子はそんなもんだ。


でもこれはどうしても気になっていて、買ったらぜひ作りたいと思っていた。テオ・ヤンセンのビーストの動画を張っておくけど、これ見たら、そりゃ、あなた、心が動くというものです。

テオ・ヤンセンのページ
http://theojansen.net/

工作や実験が嫌いなのは心が動かないだけで、手作業が苦手なわけじゃない。ビーストならぬビーズ工作なら、結構はまっていた時期もあったし、仕事で理科の実験のお手伝いをしたこともあったが、他の人より綺麗にできてたし。そんなこんなで、突然「人生は短い。やりたいことはやっておこう」と思いたち、買ってみることにしたのだ。

アマゾンから昨日到着。早速、今日作ってみることにした。鉄は熱いうちに打てである。ほうっておくといつまでもやらないから。

これね。
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あけるとこんな感じ。プラモが得意な人はOKだろう。
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説明書がちょっとわかりづらい。というか、部品がわかりづらいのかも。プラモが嫌いなのも、こんな説明書とにらめっこしなきゃいけないからだ。試行錯誤しつつ、足を組み上げる。

ようやく1脚。
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2脚できたらあとはもう少し。
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完成! なんだか美しいぞ。
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とりあえず動かしてみる。ガスファンヒーターの前で風を受けて、動物のように動くビースト君。

部品をちぎるところから、アップできそうな動画取るところまでこれだけの時間かかった。

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ビデオ撮りを抜くと、作っている時間は2時間くらい。アマゾンではみんな1時間ちょっとで作っているみたいだから、プラモ得意な人は、それくらいでできると思う。まあ、プラモ嫌いでもこれくらいで作れるということだ

ふうっと息を吹きかけても動くビースト君。子どものころにこれを見ていたら、進む道も変わっていたような勢いの満足感。どういう構造でこうなるのかを分析したくなるもんね。多分、工学的にはシンプルなんだろうし、ロボットなどではよく使われる構造だと思うけど、風を受けてまるで生き物のように動くのが面白い。ヤンセンさんがこれまで作ってきたビーストの中には、水の場所を記憶できるビーストもあるらしい。

ヤンセンさんはオランダ人。だからこんな、風を受けて動く美しい構造物(彼は生命体と呼んでいるが)を作れるんだろう。実物を見てみたいと思った。

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January 11, 2012

服部先生と原子炉4S

東日本大震災と、それに伴う東京電力福島第一原子力発電所事故を目の当たりにすれば、原子力発電なんてもうまっぴらだと思うのは当然だと思う。原子力発電所が一度事故を起こせば、取り返しの付かない事態を引き起こしてしまうのだから。そして実際に起きてしまったのだから。

でもそう思っても、原子力を今、捨てられる状況じゃないってことも、仕方のない現実としてあると思う。いずれにせよ日本には資源がない。資源争奪戦に参戦し、第二次世界大戦に突入し、結果として負けたのだし、今でも資源がないことには変わりはない。原子力を推進してきたのも資源がないからだ。太陽光や風力を導入するのは大賛成だけど、それですぐ原子力のかわりになれるものではない。少なくとも10年は無理じゃないかな。原子力をやめるなら、今すぐ、春暁や尖閣諸島のあたりでガス田を掘ったほうが現実的なのだが。

エネルギー関係は専門分野で、なまなましくなってしまうので、あまりここで突っ込んで書かないようにしていた。でも、この本を紹介したいので、少し書いてみようと思う。

ツイッターでも時々、服部禎男という研究者について触れてきたが、この方の半生を描いたとも言うべき本が『「超小型原子炉」なら日本も世界も救われる!』である。著者は政治関係で著作の多い大下英治氏である。

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この本は、ありきたりな表現だが、頭を後ろから殴られたくらい、ガツンとくるものがあった。

実は、服部先生には1度だけ、20年くらい前にお会いしたことがある。とても元気な方で、右も左もわかっていなかった私に、砂漠にポツンと置いてもいい、それだけで何十年も運転ができる、とても安全な原子炉のことを教えて下さった。

当時(も今も)、なんの知識もなかった私は、ふ〜〜〜〜んくらいで終わってしまったのだが、実は、その裏には、服部先生の長い長い戦いがあったのだ。

服部先生が生涯をかけて取り組んできたのが原子力発電所の安全性であり、究極の安全な原子炉として考案されたのが4Sである。4SはSuper-Safe, Small & Simpleの意味。iPhoneの最新バージョンではない。

Wiki 4S (原子炉)
http://ja.wikipedia.org/wiki/4S_(原子炉)

4Sは簡単にいうと、出力2万キロワット程度の超安全原子炉。金属燃料で冷却にナトリウムを使う。この原子炉は発電側の出力をあげると、原子炉の熱出力も自動的にあがるので、運転制御がいらない。小型だから効率が悪そうだが、たくさん置けるために、今の原子力発電所の敷地内で今以上の発電ができるらしい。30年間燃料交換不要の、乾電池のような原子炉なのだ。

本を読んでいただくと、服部先生がいかに、今、徹底的に批判されている原子力業界で異端児として戦ってきたかがわかる。優秀なだけに潰されることなく、どこにいっても開拓者となり、新しい思想を持ち込んでこられた。服部先生のような考え方を原子力業界がきちんと取り入れてこられたら、福島の事故はなかった。本当に残念なことだ。

福島第一原子力発電所の事故によって日本人は原子力を捨てるかもしれない。そうだとしても、世界は原子力を求めていくんじゃないだろうか。世界では人口が70億人を突破し、エネルギーが枯渇しようとしていて、中東では戦争が起きようとしているんだから。ビル・ゲイツが原子炉会社テラパワーに出資する動機も、そこにあるんじゃないだろうか。

そして、ゲイツが東芝と組んだのも、この服部先生の4Sがあったからなのだ。

Wiki テラパワー
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%86%E3%83%A9%E3%83%91%E3%83%AF%E3%83%BC

だとすれば、今、日本にある安全な技術を広めていくことが重要なんじゃないだろうか。しかも、これは今後、日本で進むであろう発電のダウンサイジングのカギとなるかもしれない。ウラン238も使えるそうなので、世界平和にもつながるかもしれない。

そもそも原子力発電の仕組みはずっとこのままなのか? こんなことが起きる前だって、原子力は設計に進歩がないという指摘があった。もちろんAP1000など安全性を高めたといわれる新しい大型炉はあるけれど、ここで考え方をガラっと変えてみてはどうなのか。

服部先生は電力中央研究所で乾式再処理も手がけてこられた。これならば日本が核兵器開発の疑いをかけられることもなく、六ケ所村の再処理施設のコストも抑えられたそうだ。これはエネルギー業界ではよく言われていた話ではあるのだが。加えて言えば、放射線ホルミシスの研究が始まったのも服部先生がきっかけである。しかも世界的なレベルの話である。

日本において今後必要になってくるのは、廃炉となる福島第一原子力発電所4基を含めた最終処分の部分だけれど、こういったところに関しても服部先生のお考えを伺いたいところだ。今の政府は、日本の電気事業のあらゆることを見直そうとしているようだが、それならば服部先生の考えを取り入れていくことも大事だと思う。


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January 05, 2012

フェア・ゲーム

実は英語で読もうと思っていたんだけど、絶対無理だよなあと思ってほうっておいたら日本語版が出ていた。


ブッシュ政権時代の政権によるCIAスパイ漏洩事件。CIA工作員のヴァレリーはブロンド美人で、夫は元大使ときたから、一大スキャンダルとなった。元大使がイラク攻撃の原因となった疑惑を否定したため、報復としてリークされたらしい。その前後の顛末をスパイと名指しされたヴァレリーが書いたのがこの本だ。

なにせこの写真だから印象深い(笑) 雑誌の取材を受けた時の写真らしいんだけど…おい…。
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漏洩の主犯は当時の副大統領であるチェイニーといわれているが、捕まったのは、副大統領の主席補佐官のスクーター・リビーだった。カール・ローブも辞めたっけ。

リークをうけて一番最初に新聞記事として書いたのは、有名なコラムニストのロバート・ノバックだったけど、どちらかというとその後書いた記者のうち、NYTの記者が情報源を秘匿したとして、逮捕されたんだっけ。なんだかよくわからない展開だったな。

暗いニュースリンク CIA工作員名漏洩事件:カール・ローブ暗躍中
http://hiddennews.cocolog-nifty.com/gloomynews/2005/07/cia_f6ce.html

本の中では、2人が政府からどんな目に会ったか、どう戦ったかが書かれている。いやいや国家を相手にするのは、こんな上流そうな人たちでも大変なんだなあと思う。それと美人スパイって本当にいるんだって単純に驚く。スパイになるには相当な訓練をされるそうだ。ただし中東系のスパイが少ないという。日本系はいっぱいいそうだけど。

ただし、この本には彼女がどんなスパイ活動をしていたかは全く書いてない。CIAが出してはいけない部分を墨塗りしていて、そのまま出版しているので、もしかしたら書いているのかもしれないが、スパイ小説のような切った張ったのハラハラシーンはございません。それにしても墨塗りしている本って、戦後の教科書くらいなもんだと思っていたのだが、現代にもあるのね。

苦言を言えば、この本に上杉隆氏の寄稿はないほうがよかった。必要ない。


この事件が去年映画化されたのは知っていたのだけど、日本では今ごろ公開されているとは知らなかった。面白そうなので見てみたいが、もう終わってそう。

フェア・ゲーム
http://fairgame.jp/

追記:DVDも出ましたね

これも読んでみたい。

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October 05, 2009

山川の歴史教科書

"もういちど読む山川日本史" (山川出版社)

 
 
  今日、書店に行ったら、なんとこの2冊が並んでいた。別の書店に行ってもあったから、売れているんだろうと思うけど、そう、高校時代に習ったあの山川の歴史教科書がそこに山積みに…。
 
  うわ〜〜〜〜〜!
 
  私は20数年前の山川の歴史教科書をまだ大事にとってあって、リビングに常備してあるのだ。だって歴史って時々どうしても知りたくなるから。特に中東や日本の近現代史。中東はそもそもなんでこうなったんだっけとか、日本の明治以降の歴史はどうだっけ、という、教科書には載っているけど学校ではあまり習っていない内容を確認するのにいいのですよ。あと、映画や大河ドラマを見たときも、その時代背景を調べたりとか。いろいろ歴史解説書みたいのも買ってあるんだけど、トピックスだけを丁寧に解説していたりするので、すべてを簡単に網羅しているオーソドックスなこれが一番いい。本当は、勉強用に使っていた横長の副読本もあると、いつ何時、世界のあちこちで何が起きていたかわかるからいいんだけど。
 
  そんなわけで書店でこの2冊を見たときは、「捨てちゃったけど、もう一度どうしても山川の歴史教科書が読みたいというニーズに答えたんだ!!」と思って感動した。感動して買おうかと思って手に取ったんだけど、内容はあまり変わらなそうだし、ホンマモンの自分の教科書と違ってマーカーが引いてない(当たり前だよ)。で、家にせっかくあるんだしと思って、そのまま戻してきたんだけど。
 
  大人になるにしたがって歴史は重要だとひしひしと感じます。アマゾンの評価はなぜかとっても低いので(苦笑)、気になる人は書店で手にとってからご購入を検討してくださいませ。 
 
 

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July 21, 2009

マスメディアが消滅したあとの社会

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"2011年新聞・テレビ消滅 (文春新書 708)" (佐々木 俊尚)






佐々木俊尚氏の『2011年新聞・テレビ消滅』を読んだ。弾さんが紹介していたので知ったのだが。

404 Blog Not Found
メディアにマスはいらない - 書評 - 2011年 新聞・テレビ消滅
http://blog.livedoor.jp/dankogai/archives/51235390.html

ネットが情報を無料化し、情報独占により稼いできた新聞や雑誌、テレビを殺すという、この話題、5年くらい前に花盛りだった。「ネットは新聞を殺すのか」という議論があったし、ブログもあった。時事の湯川さんでしたっけ。マスではないけれどメディア業界の片隅にひっそりと生息している身分としては、この問題はかなり興味がある。

今、確実にネットは新聞を殺しつつあると私は思う。記憶に新しいところでは朝日新聞だって2008年度決算は営業利益は確保したものの、最終損益は139億円の赤字。テレビ朝日も同17億円の赤字となった。毎日新聞も赤字だったようだし、ほかの社も収益状況の激変具合に大きな違いはないだろう。

Findstar 朝日新聞社、3月期決算。当期純利益139億円の赤字。
http://www.findstar.co.jp/news/syosai.php?s=001586
るいねっと 朝日新聞社 2009年3月期決算
http://www.rui.jp/ruinet.html?i=200&c=400&m=207572
テレビ朝日 決算短信
http://company.tv-asahi.co.jp/contents/setnote/index.html

もちろん、こうしたマスメディアの凋落の原因はコンテンツがダメだったからーといえなくもない。記事内容についてネット上で批判される案件も多かった。でも、毎日の「WaiWai」みたいに確かにそりゃだめだろ〜と思うこともあったけれど、批判された記者に同情してしまう部分もあったりしたな。

まあ赤字決算には世界同時不況もかなり影響しているに違いない。でも、今の新聞やテレビや広告業界の状況は、記者や編集や営業が努力すれば、もしくは景気が回復すれば盛り返せるって話ではなくなっているような気がする。だってビジネスモデルが崩壊しているんだから。

『2011年新聞・テレビ消滅』は、新聞やテレビのビジネスモデルが崩壊しているという事実を丁寧に証明していく。アメリカの事例を出しながら、収益体制がどう崩壊していくのか、なぜ、収益が確保できなくなっていくかについて解説する。

詳細はぜひ本を読んでいただきたいのだが、このビジネスモデルの崩壊は流通を握れなくなったために起きている、と佐々木氏はいう。佐々木氏は流通という言葉ではなくコンテナと言っているが。ごく限られたコストの高い流通の場(新聞のページ数やテレビの不可逆性のある番組枠など)を独占することで、情報を高く売り、その利益で記者や制作者を確保してきたマスメディア。しかしインターネットによって流通自体が安くなりt規模が拡大し、情報提供に誰でも参加できるようになり、情報は無料化してしまった。今では誰でもいつでもインターネットからニュースをタダで拾うことができてしまう。昔は新聞を買うか、CM付きもしくは受信料を支払ってテレビを見なければならなかったのに。

ネットに流れているニュースだって、本来は新聞やテレビの記者が取ってきたものだ。しかし流通をインターネット側に握られたことで、新聞やテレビは小作人になりつつあると佐々木氏はいう。

この本の中で新聞記者が「われわれが情報の取捨選択をして一般市民にどの記事を読むべきか教えている」と話すところがある。メディア側の「上から目線」ぶりを描いているわけだ。本来、新聞側の情報の取捨選択は、限られたスペースの中で効率的に情報を伝えるためにあるので、市民に情報の取捨選択能力がないわけではないんだけど。

まあ、つまりこういう人が多い業界だからこそ佐々木氏は懇切丁寧に、「もうビジネスモデルは崩壊していますよ。これは不可逆の流れですよ」としつこいぐらいに説くのだ。これは業界の雰囲気として、まだなんとかなるかもしれないなんて思っているところがあるからだと私は思う。

そんなわけで地上デジタルが始まる2011年に、新聞もテレビも崩壊するのだと佐々木氏は言うわけだ。そして、業界を守るのではなく「最も良いメディア空間とは何か」を考え、創りだしたらどうかと提言する。

読み終わって、全くその通りだと思う反面、何かもやもやとしたものが残った。情報産業において、新たなビジネスモデルをつくるべきというのはわかるんだが、今のマスメディアが崩壊するのも時間の問題なのにそんな悠長に構えてていいのか? 

何を私は焦っているのか…。そこで買ったままになっていたクーリエジャポン7月号「サヨナラ、新聞」号を開いてみたのだが、そこに答えが書いてあった。「不正」である。

クーリエ・ジャポンの記事によれば、新聞購読者数が少ない国ほど不正が多いという。直接の相関関係があるかは不明だが、それなりの報道機関があれば、不正も少なくなるということだろう。

しかし報道機関に資金がなくなり、記者が雇えなくなり、つっこんで書いていく記者がいなくなったら(働いている記者が少ないって言う批判はさておいて)、不正はどれほどあふれかえるのだろう。ひとたび社会がそうなってしまうと、それをひっくり返すことは難しいんじゃないのか。戦前の日本の新聞が、大本営発表しか書けなくなり、ついぞ自分たちでそれをひっくり返せなかったのと同じように。

報道機関がなくなった世界に私は住みたくない。もちろん、今のままのマスメディアじゃなくていいし、もっと重要な報道をすべきとは思うんだが、今のマスメディアすらなくなったらどうなることやら。

イランではTwitterが活躍したし、ウイグル争乱の発端は何千キロも離れた場所の事件をYoutubeで見たからなんだけども、だからって市民ジャーナリズムが、現在の報道機関に代替できるかというとそうでもないだろう。

そうはいっても今さらみんなが新聞を読み始めるわけもなく、時間通りにテレビの前に座るわけでもない。でも報道は絶対的に必要なわけだ。市民もニュースを発信できるようになっているけれど、それをまとめたり、裏を取ったりする人も必要だし。

そんなわけで、今すぐ、強制的にでも、佐々木氏の言う「最も良いメディア空間」を見いだす必要がありそうなんだけど、そう簡単に見つかりそうにないところが悩ましい。ちょっと危惧しているのは、メディア業界内の人は「ビジネスモデル」といわれてもピンと来ない人が多いんじゃないかということ。いや、ただの思い過ごしだと思うけど…。そう…ですよね?

 

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January 23, 2009

オバマ大統領誕生の背景を探る『オバマ・ショック』

9784087204773 アメリカで二宮金次郎が復活するらしい。いや、銅像がアメリカにできるってわけじゃなくて、アメリカの二宮金次郎はリンカーンのことなんだけど。何時間も歩いて学校に通ってその行き帰りで本を読んでたんだって。

ブッシュ時代は「努力すれば大統領にだってなれる」ってのが全く嘘っぽかったんだけど、オバマになって、学校でようやくそういえるようになったと。だって「金持ちのボンボンであれば、お父さんのコネで一流大学にも入れてもらい、徴兵も州兵でお茶を濁してもらえます。しかも大統領の息子であれば、かなり汚い手を使って目くらましで大統領の椅子を手に入れることもできるし、大統領になったらお友達を利するような政策を行えます」なんて生徒に教えられません。

つまりアメリカでは倫理が復活したんだな。よかったよかった。

あ、このエントリ、集英社新書『オバマショック』の読後感想文です。

この本は、映画評論家の町山智浩氏と明治大学名誉教授の越智道雄氏の、オバマ大統領誕生についての緊急対談がまとめられている。ヒラリーが国務長官を引き受けるところまで入っているから、本当に緊急だったと思う。

本を読み進めるにつれ、大統領選を見ていてアメリカ社会について疑問に思ったところが氷解していく。福音派とか、リバタリアンとか、FOXニュースとかね。オバマが登場するまでのアメリカ社会の背景と、オバマを選ばざるを得なかったアメリカの事情がわかり、大統領選ウォッチャーとしては、いろんなところに線を引きたくなる。

一つ印象に残ったところをあえてあげると、「第4章 覇権国家の黄昏」で、ゲリラが帝国を倒すと指摘しているところが、なかなか面白い。大英帝国の衰退も南アフリカのボーア戦争からだし、アメリカが大英帝国から独立できたのもインディアンから学んだゲリラ戦だし、ソ連が崩壊したのもアフガンから。となるとアメリカはベトナムもイラクもアフガンも首を突っ込んでいるので、もう崩壊してもおかしくないようだ。イスラエルもだね。

この本の中で、オバマは、過去が無い宇宙人に、スーパーマンに、コスモポリタンに、弥勒菩薩にと、いろいろ例えられているが、つまり普通のアメリカ人じゃないから良かったんだろうな。歴史観のないブッシュから、過剰なまでに歴史をなぞるオバマへの転換という視点も面白い。

まあそんなわけで、オバマ大統領誕生の背景を知りたい人はぜひ、ご一読ください。すぐ読み終わりますよ。

越智道雄氏のコラム
オバマを選んだアメリカ オバマが展開するアジア外交
http://www.nikkeibp.co.jp/article/column/20090120/126064/

町山氏のブログ
http://d.hatena.ne.jp/TomoMachi/

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October 28, 2007

国敗れて企業あり

内橋克人著 『悪夢のサイクル ネオリベラリズム循環』

NHK特集『ライスショック』で米の自由化に反対していた内橋氏の『悪夢のサイクル』を読んでみた。

内橋氏は、なぜ、今こんな日本に成り下がっているのかを、1970年代のアメリカから読み解いていく。市場原理主義は景気の上昇・下降を繰り返し、どんどんそのカーブは急峻になってゆき、金持ちは金持ちに、下層階級はどんどん貧乏にと二極化していくというサイクルがあると主張。アメリカ、南米、日本の事例を例にあげて一つ一つ証明していく。そして、市場原理主義でも、規制強化でもなく、北欧のように市民が市場を調整し、共生する方法を取っていくという第三の道を選択することこそ、日本の道であるということを語っている。

とてもわかりやすいし、もやもやと考えていたものが、スッキリと理論づけて解説されているので、市場原理主義に疑問を持つ方はぜひ読んでいただきたいと思う。

私がこの本の中で、最も驚いたというか、なるほど!と思ったのは、どこから市場原理主義が生まれたのかってことだ。

市場原理主義が台頭したのは1970年代末のアメリカだという。

当時、1970年代初期までのベトナム戦争のおかげで財政が悪化し、戦争さえなければ働いていた公共政策が破綻し、インフレが発生してしまっていた。

1960年代、市場原理主義が生まれたときは、規制が必要というケインズ学派が主流で、市場原理主義は奇矯な論理とみなされる傍流だったらしい。

しかし、1970年代後半にケインズ学派はインフレで行き詰った。そこで市場原理主義論者たちは、インフレを抑えるために貨幣の供給量で経済をコントロールできる!という理論をぶちあげた。打開策を探っていたカーター政権は、これを採用。規制緩和や累進課税を弱め、貿易の自由化も実施した。

そのおかげでインフレは抑えられたらしい。それで、アメリカでは市場原理主義者たちが主流になっていったんだそうだ。

この市場原理主義台頭の主役がフリードマン。ユダヤ人である。

Wiki ミルトン・フリードマン
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9F%E3%83%AB%E3%83%88%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%83%95%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%89%E3%83%9E%E3%83%B3

フリードマンは、迫害を逃れアメリカに移住したユダヤ人の息子だそうである。だから、アメリカ人ではあるが国家が信用できない。国家の迫害から逃れ、金だけが自由を手に入れる手段であったからだろう。あ、差別じゃないからね、念のため。

しかし規制緩和から30年後のアメリカの現実は、大きな所得格差が生まれ、金持ちはどんどん金持ちになり、貧乏人は這い上がれず、教育も医療も公のものは荒廃している。国民を守るという国としての役割は破綻したが、大企業と金持ちは残った。それでもいいというのが市場原理主義だそうだ。国敗れて企業あり、である。

というわけで日本はアメリカまでひどくならないうちに、少し保護主義よりの、内橋氏のいう「第三の道」に振り子を戻したほうがいいように思うんだが、経団連の言うことしか聞かない政府じゃ期待しようがない。何しろ、史上最高益を出してもベアアップもしない企業が経団連会長会社だったわけだし、だから、国内で車が売れなくなったといっても誰も同情しないわけだ。

そういえば日本の市場原理主義第一人者も税金納めていなかったっけ。国家から自分だけ自由になっている人に、国民の声が届くはずありませんな。あ~あ。

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September 29, 2007

イラク攻撃支持は日英同盟にさかのぼるらしい

麻生太郎著『自由と繁栄の弧』だが、トロトロと読んでいたら、総裁選も終わってしまった。外務大臣時代に行った演説が中心となる本である。

自由と繁栄の弧は、外務省が昨年発表した日本の外交戦略だが、このもとになった論文があって、それを麻生太郎が取り上げ、国としての戦略として発表したわけだ。

発表時の演説はこちら↓
外務省 「自由と繁栄の弧」をつくる
http://www.mofa.go.jp/mofaj/press/enzetsu/18/easo_1130.html


本のほうの『自由と繁栄の弧』には、『とてつもない日本』と変わらない麻生太郎の主張が書かれているわけだが、演説集だけに、もう少し踏み込んだ内容となっている。

中でも一番驚いたのは、イラク戦争をなぜ日本が真っ先に支持したかという理由を書いたくだりだ。日本のおかれている立場が、こうも難しいものなのかと思わせる内容だった。

詳しい内容は本で読んでほしいのだが、以下に簡単に説明する。

小泉首相はイラク攻撃開始から1時間後に、支持を表明する記者会見を開く。会見に先立ち、小泉首相と麻生政調会長を含む党5役は最終方針を確かめる会議を開いた。

麻生太郎はそこで、日英同盟の成功と失敗を思い出したという。日本は、日英同盟により、日露戦争で勝利したが、第一次世界大戦で英国をなかなか支援せず、最終的には支援したものの、英国側に不信をもたらし、日英同盟は失効する。

jin注:その後、日英関係は悪化し、日本は独伊と同盟を組み、最終的に英米中蘭によるABCD包囲網が敷かれ、戦争に突入していった模様 
参考 Wiki 日英関係http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%97%A5%E8%8B%B1%E9%96%A2%E4%BF%82

麻生太郎の祖父、吉田茂は日英同盟を廃止するかしないかというときに英国大使館に外交官として勤務し、その後、昭和11年から駐英大使として日英の和平に奔走した。
参考    Wiki 吉田茂
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%90%89%E7%94%B0%E8%8C%82

麻生太郎は、イラク攻撃について、独仏は米を非難しているが、日本は独仏のように周囲に敵がおらず武力もある国ではない。日本は軍事を米国に頼っているわけで、都合の良いときだけ助けてもらうというのは通らない、と説明。これを聞いた小泉首相は、会見で支持を表明したのだという。(最初から支持の方針は決まっていたとは思うが)

イラク戦争の当時の各国の反応はというと・・・・

Wiki イラク戦争
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A4%E3%83%A9%E3%82%AF%E6%88%A6%E4%BA%89

各国での反応

開戦直後の各国の反応は以下の通りであった。

戦争開始後、世界各地での反戦デモが繰り広げられ、一部の国では規制しようとする警察と小競り合いが起き、負傷者や逮捕者が出るほど激化した。著名アーティスト達は揃って攻撃を非難。これと同時にワシントンにおいては開戦を支持するデモも大規模に行われた。

正直言って、個人的にはイラク戦争はまったく支持できない。当時から9.11とイラクとの関係はないとみられていたし、大量破壊兵器はみつかっていなかった。今となってみれば、イラクにはそんなものは存在しなかったわけで、結局アメリカは油を取りにいったんだということは、グリーンスパンだって言っている。

AFP グリーンスパンFRB前議長、回顧録でイラク戦争批判
http://www.afpbb.com/article/politics/2285093/2156785

しかし、それでもなお、日米安全保障条約がある限り、日本としてはアメリカを支持しなければならないわけだ。確かに、イギリスも同盟国だからすぐに支持し、戦争にも参加した。それでブレアは人気を落としていくんだが。

今のままだと、日本はアメリカの為政者が平和的な人となることをひたすら祈るしかないわけで、なんだかなという感じである。

さて、福田政権は、北朝鮮には「過去の清算」もするらしいし、日本人が殺されたミャンマーには「慎重」だ。戦争も憲法改正も望んでいるわけじゃないけれど、ちょっとお人よし過ぎるんじゃないのかな。もうちょっとなんとかなんないですかね、ローゼン閣下。

朝日 「男は何度でも勝負する」 麻生前幹事長が全国行脚
http://www.asahi.com/politics/update/0928/TKY200709280378.html


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January 03, 2007

謹賀新年

2007年を迎えて、とはいえ書くこともないので最近読んだ本と見た映画で面白かったものについて書いてみるテスト。

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本:『インテリジェンス 武器なき戦争手嶋龍一、佐藤優著

手嶋龍一、佐藤優の対談を書籍にしたもの。さまざまなブログでもすでに話題になっており、いまさら書くのもなんだが、とても面白い。

インテリジェンスというのは、外交や諜報活動などを通して得る国際的な情報の収集・分析のことを指すらしい。

手嶋龍一は元NHKワシントン支局長。9.11のときは、揺れながら、言葉を噛みながら、連日、寝る間も惜しんで報道していた姿を記憶している人は多いだろう。まあ、放送している内容は、なんだか大本営発表風であったし、この人独特の文学的美辞麗句が並ぶ報道であったのだが、実はインテリジェンス界(報道部門)ではすごい人らしい。最近では、北朝鮮の偽札問題をテーマとする『ウルトラダラー』がベストセラーとなっている。

佐藤優は鈴木宗男と組んだことで外務省から(?)パージされた外務事務官である。『国家の罠-外務省のラスプーチンと呼ばれて』をはじめ、外交に関する著書は面白い。

そんな二人がお互いのインテリジェンス能力をほめあいながら進む対談は、少々こそばゆい部分もあるのだが、インテリジェンスとは何かを具体的な事件などからひもといていくので、とてもわかりやすく、面白い。世界の力関係が激変している今、日本にどんな道があるんだろうか、と不安に思っている方々にお勧めの一冊。新書だけにコストパフォーマンスはとても高い。


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映画:『007 カジノロワイヤル』

いうまでもないが、007シリーズ最新作である。

ジェームズ・ボンド役としては個人的には初代ショーン・コネリーと5代目のピアース・ブロスナンが好きだったわけだが、今回、ダニエル・クレイグに変わった。ブロスナンがよかっただけに賛否両論あったらしいが、今回はジェームズ・ボンドが007になるという、もっとも若いころの話。というわけで、交代になった模様だ。

一見するとゴッツイ感じのクレイグ。「ミュンヘン」に出ていたというので予告編を見て思い出してみたが、確か冷たい感じの男で、エレガントで甘いボンドとはかけはなれたイメージだった。ま、みんなそう思っていたんだろうけど。

でもちらちらと見る予告編が意外に色っぽい。映画が封切られると、シリーズ最高傑作の呼び声高し。これは見ざるをえないじゃないですか。

というわけでレイトショーで鑑賞。

荒い。ヘタ。映画じゃなくてボンドが。

007修行中のボンドは、殺し方もエレガントじゃないし、いろいろ失敗するし、Mも困ってしまうのだ。優秀なんだけど、荒いボンド。しかも肉体派。007を本気でやめようとするし(退職願がメールっておいおい)。でも、その未完成ぶりがとても魅力的なのである。

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クレイグのボンドは、007としてはお決まりのタキシードに包まれたあたりから妙に色っぽく、かっこよくなる(特にタイをはずしたところが)。とはいえ涼しい顔で問題を解決していく完成された007とは異なり、一件一件必死なのだ。その必死さがこの映画の魅力であり、見てしまえば間違いなく魅了されてしまう。

007シリーズ全作を見たわけではないので、最高傑作かどうかはわからないが、大傑作であることに間違いない。金髪碧眼の、ちょっとだけ人間くさい、新しい007の誕生である。007シリーズをこれからも見るだろうという人は、映画館に急げ!


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May 08, 2005

『幻の水素社会』

幻の水素社会 「環境問題」に踊らされるピエロたち』
藤井 耕一郎 著

今の燃料電池ブームはすごい。燃料電池車はあと少しで手が届きそうな超クリーン自動車ということに(世間的には)なっているし、首相公邸にも家庭用燃料電池が入ったくらいだ。産業紙まで含めれば、燃料電池関連の技術開発記事が新聞に載らない日はない。

だが、水素社会や、その中核となる燃料電池については、好意的な意見のほかに、懐疑的意見も聞いていた。だからこの本が「懐疑的」部分を整理し、科学的に説明してくれているのかなと期待して読んでみた。

以下感想。

燃料電池が素晴らしいという社会的風潮に一石を投じようという「気持ち」はわかる。水素信仰に喧嘩を売るという姿勢は面白い。

しかし、一つ一つの章は書き込んであるにもかかわらず、なんだか雑然としていてすっきりしない。
仕方ないので内容をものすごく単純に要約してみると
1.環境問題の奥底には南北問題やイスラム問題がある。京都議定書で日本は負け組となった 
2.水素社会は夢みたいなもの。実際にやろうとするとインフラに莫大なコストがかかる 
3.水素製造から燃料電池までの総合効率もいいとはいえないし、化石燃料代替にならない
ってところか。

本に書かれているとおり、エネルギー問題は国際政治に直結していて、そこにはブラフが多い。イラク戦争をみてもわかる。また石油が本当に枯渇するのかとか、本当に温暖化の原因がCO2なのかとかの議論があることも、京都議定書では日本が一番損をしていることも事実。燃料電池については、実質的な総合エネルギー効率やCO2削減効果、エネルギー安全保障問題に関する効果への疑問があることも本当だ。私自身は知っていることが多かったが、水素社会がすぐ来ると思っていた人には刺激的だろうし、本の表題にあるように「目を覚ます」かもしれない。

しかし結論は「水素社会はホラ」以上はないので、読者は、目を覚ましたけど、じゃあどうしろというのかと疑問を持ってしまう。また、扇情的な書き方は、意図と逆の反応も生み出しかねない。まあ、それがウリなのだろうが。

水素社会にどんな疑念を抱こうと、日本の立場はあまりかわらない。石油枯渇が本当かというより、国力の衰えや世界的なエネルギー不足状態によって、石油や石炭、ガスなどの化石燃料が入手できなくなった時に備え、なんらかの形でエネルギー安全保障を確立する必要があるからだ。その解決策を水素や燃料電池だけに絞ってはいけないが、風力や太陽光、バイオマス、原子力、核融合なども含めて、総合的にエネルギーの確保と高効率利用への努力をしなければならないことに変わりはない。CO2問題だって京都議定書のホスト国でもあったわけで、当面は削減に励まなくてはいけないだろう。

藤井氏は、日本はエネルギー問題でもお人よしだ、ということを言いたいのだろう。しかし強硬論を唱えればうまくいくわけでもない。日本らしく、どちらつかずで、利にさとく立ち回るしかないのかなと思う。その「利にさとく」が難しいのだが。

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